固定電話番号を使う電話転送役務とは?クラウドPBXに関係する規制・制度を解説

従来のビジネスフォンに代わる電話システムとして普及している「クラウドPBX」。
インターネットを利用することで、スマートフォンやパソコンから会社の電話番号で発着信できるサービスもあります。
こうした特徴から「クラウドPBXには総務省が定めた3つの規制がある」と説明されることがありますが、クラウドPBXというサービスそのものに、総務省が一律に定めた「3つの規制」があるわけではありません。
実際には、03・06などの固定電話番号を使った電話転送の仕組みでは、電気通信番号制度に基づき、本人確認や活動拠点の確認、設備、通話品質、緊急通報の取扱いなどが関係します。
どの条件が関係するかは、利用する電話番号やサービスの構成によって異なります。
この記事では、クラウドPBXに関係する「規制」とは何を指すのか、固定電話番号と電話転送役務に関する制度がなぜ設けられているのかを中心にわかりやすく解説します。
この記事のもくじ
この記事の監修者
この記事の監修者 登 雄三
(のぼり ゆうぞう)
保有資格:
工事担任者(AI・DD総合種)
/電気工事士
2010年設立「株式会社デジコンnet」の代表取締役。本社を構える神戸を中心に、全国でビジネスフォン・複合機・防犯カメラなどの機器販売や、電話・電気・LAN工事、VPN構築を手掛ける。
2010年設立「株式会社デジコンnet」の代表取締役。本社を構える神戸を中心に、全国でビジネスフォン・複合機・防犯カメラなどの機器販売や、電話・電気・LAN工事、VPN構築を手掛ける。
クラウドPBXに関係する規制・制度とは
クラウドPBXの規制を理解するうえで重要なのは、「クラウドPBX」というサービスの呼び方と、法律・制度上の区分を分けて考えることです。
クラウドPBXとは、従来オフィス内に設置していたPBX(構内交換機)の機能を、クラウド上から利用する電話システムの総称です。
サービスによって、利用できる電話番号や外線の接続方式、スマートフォンなどからの発着信の仕組みは異なります。
クラウドPBXそのものに「3つの規制」があるわけではない
総務省の制度では、「クラウドPBXには3つの規制がある」という形で一律のルールが定められているわけではありません。
日本の電話番号は有限の資源であり、電気通信事業法や電気通信番号規則などに基づいて利用・管理されています。
電気通信番号を使用する電気通信事業者には、電気通信番号使用計画に関する制度などが設けられています。
クラウドPBXとの関係で特に押さえておきたいのが、03・06などの固定電話番号を使用する「電話転送役務」です。
固定電話番号を使った発信転送・着信転送については、固定電話番号が持つ地域との結び付きなどを維持するため、本人確認や活動拠点、設備などに関する条件が設けられています。
つまり「クラウドPBXだから規制される」のではなく、どの電話番号を、どのような仕組みで利用するかによって関係する制度が異なると理解するのが適切です。
クラウドPBXと「電話転送役務」は同じものではない
クラウドPBXと電話転送役務は、同じ意味ではありません。
クラウドPBXは、電話システムの仕組みやサービスを表す一般的な呼び方です。
一方、電話転送役務は、発信元や着信先などの電話番号を変更して、通話を別の電話番号などへ自動的に転送する機能の提供に関係する電気通信役務です。
たとえば、スマートフォンなどから発信した通話を固定電話番号からの発信として相手につなぐ「発信転送」や、固定電話番号への着信を別の番号・端末へつなぐ「着信転送」などがあります。
そのため、すべてのクラウドPBXに同じ規制・条件が適用されるわけではありません。
利用している電話番号や、実際の発着信がどのような構成になっているかまで切り分けて考える必要があります。
固定電話番号を使う電話転送役務では何が確認される?
03・06などの固定電話番号を使用する電話転送役務では、固定電話番号が本来持っている地域との結び付きを維持するため、複数の条件が設けられています。
主なポイントは以下のとおりです。
- 最終利用者の本人確認
- 番号区画内にある活動拠点の確認
- 設備の設置状況に関する確認
- 一定の音声伝送品質
- 発信転送時の緊急通報の取扱い
これらは、クラウドPBXを利用する企業へ一律に課される「5つの規制」という意味ではありません。
固定電話番号を使用する電話転送役務を提供する電気通信事業者側に制度上の条件があり、その確認の一環として利用者にも本人確認や活動拠点の確認などが求められるという関係です。
また、サービスの構成などによって、適用される条件や代替措置が異なる場合があります。
出典:総務省「電気通信番号制度」内「手引き2 固定電話番号を使用して電話転送役務を提供する電気通信事業者向け」
利用者本人の確認
固定電話番号を使用する電話転送役務を提供する事業者には、契約時に原則として最終利用者の本人特定事項を確認することが求められています。
本人特定事項とは、個人であれば氏名・住居・生年月日、法人であれば名称・本店または主たる事務所の所在地などです。
これは、固定電話番号を誰が利用しているのかを確認し、適正な番号利用につなげるための仕組みです。
ここで注意したいのが、制度上の「本人確認」と、クラウドPBXなどのサービス事業者が独自に行う契約・支払審査は別だという点です。
総務省の手引きで示されている本人確認・拠点確認の確認事項に、「自己破産歴」や「借金の有無」が一律の審査項目として定められているわけではありません。
事業者が独自に行う契約審査とは分けて考える必要があります。
番号区画内にある活動拠点の確認
固定電話番号には「番号区画」と呼ばれる地域との対応関係があります。
03や06といった市外局番から、おおよその地域との結び付きをイメージできるのはそのためです。
このような、電話番号から通話相手の所在地などを識別できる性質を「地理的識別性」といいます。
固定電話番号を使用する電話転送役務では、この地理的識別性を確保するため、原則として最終利用者の活動拠点が、その固定電話番号に対応する番号区画内に存在することを確認します。
つまり、インターネット経由で利用できる電話だからといって、全国どこの固定電話番号でも自由に取得・利用できるわけではありません。
また、単に法人登記上の住所があるだけで、必ず制度上の「活動拠点」と認められるとは限りません。
総務省の手引きでは、実際に活動できる空間がないバーチャルオフィスや、常時利用することを想定していない貸し会議室、小規模な倉庫・私書箱などについて、活動の実態が認めがたい場合の例が示されています。
重要なのは、住所の表記だけではなく、その場所で実際に継続的な活動を行う実態があるかという点です。
設備や通話品質にも条件がある
固定電話番号の利用条件は、特定の「クラウドPBX用アダプター」を設置するかどうかだけで決まるものでもありません。
固定電話番号を使用する電話転送役務では、原則として、番号区画内にある最終利用者の活動拠点と固定電話サービス側の設備との関係についても確認が求められます。
ただし、既存の固定電話サービスを利用して電話転送役務を提供する場合など、サービス構成によって例外や代替措置があります。
そのため、
という単純な判断はできません。
さらに、固定電話番号を使った電話転送役務には、設備だけでなく音声伝送品質についても一定の条件があります。
市外局番を利用できるかどうかは、番号区画、活動拠点、設備構成、サービス提供方式などを含めて判断する必要があります。
なぜ固定電話番号の利用に条件が設けられているのか
固定電話番号を使用する電話転送役務に条件が設けられている背景には、固定電話番号が長年持ってきた性質を維持し、適正な番号利用や利用者保護につなげるという考え方があります。
主な理由を3つの観点から見ていきましょう。
固定電話番号の地理的識別性を守るため
03や06などの固定電話番号には、地域との結び付きがあります。
ところが電話転送を利用すると、実際には別の場所やスマートフォンから通話しているにもかかわらず、相手には固定電話番号を使った発着信として見える場合があります。
こうした利用を無制限に認めれば、「その固定電話番号がどの地域と結び付いているのか」という地理的識別性が損なわれる可能性があります。
総務省では、固定電話番号を使用した電話転送について、固定電話番号の「地理的識別性」や「社会的信頼性」を確保する観点から制度を整備しています。
そのため、クラウドや転送技術によって場所に縛られない電話利用が可能になっても、固定電話番号については番号区画と活動拠点との関係が重視されます。
固定電話番号の不正利用を防ぐため
電話番号は、単に通話相手を識別するためだけの数字ではありません。
企業や組織の連絡先として広く使われており、誰がその番号を利用しているのかを適切に管理することも重要です。
固定電話番号を使った電話転送によって実際の利用主体や活動拠点が分かりにくくなれば、通話相手が発信者を誤認したり、番号が不正に利用されたりするリスクも高まります。
そこで本人確認や活動拠点の確認などを通じて、固定電話番号を誰が、どの拠点で利用するのかを確認できる仕組みが設けられています。
ただし、これは「信頼のない企業はクラウドPBXを契約できない」という意味ではありません。
電話番号の適正な利用・管理のための制度として理解する必要があります。
緊急通報で発信場所を誤認させないため
固定電話番号と電話転送の関係を考えるうえでは、110・118・119などの緊急通報も重要です。
固定電話番号を使った発信転送では、緊急通報機関へ通知される情報と、実際に通報している利用者の場所が異なる場合があります。
その結果、通報者の位置などを正しく把握できないおそれがあるため、緊急通報機関に利用者を誤認させるおそれがある発信転送については、緊急通報を不可能にする措置や代替手段の確保、利用者への説明などが求められます。
ただし、「クラウドPBXなら110・119などへ一律に発信できない」という意味ではありません。
正しい位置情報を緊急通報機関へ通知できるなど、利用者を誤認させるおそれがない構成では、扱いが異なります。
実際に110・119へ発信できるかどうかは、サービス・電話番号・端末・外線構成などによって異なります。
詳しくは「クラウドPBXで110・119は使える?緊急通報・発信できない番号を解説」をご覧ください。
クラウドPBXの規制で誤解しやすい3つのポイント
ここまで解説したとおり、クラウドPBXに関係する制度は、単純に「できる・できない」だけで整理できるものではありません。
最後に、特に誤解されやすい3つのポイントを整理します。
「クラウドPBXでは110・119が使えない」とは限らない
緊急通報の可否は、「クラウドPBX」という名称だけでは判断できません。
利用するサービス、電話番号、端末、外線の接続方式などによって異なります。
特に固定電話番号を使った発信転送では、緊急通報機関へ通知される情報によって、実際の利用者や発信場所を誤認させるおそれがあるかどうかが重要です。
そのため、「クラウドPBX=緊急通報不可」と一律に覚えるのではなく、利用する電話システムの構成ごとに確認する必要があります。
「アダプターを設置すれば03・06を使える」とは限らない
市外局番を利用できるかどうかを、「専用アダプターの有無」だけで判断することもできません。
固定電話番号を使用する電話転送役務では、番号区画、利用者の活動拠点、設備の設置状況、サービスの構成などが関係します。
「機器を1台置けば全国どこの市外局番でも利用できる」という仕組みではありません。
また、現在使用している固定電話番号をクラウドPBXなどへ引き継げるかどうかは、今回解説している固定電話番号の利用条件とは別の問題です。
電話番号の引き継ぎについては「クラウドPBXで電話番号は変わらない?引き継ぎ条件と3つの注意点」で詳しく解説しています。
「本人確認」と事業者独自の「契約審査」は別
クラウドPBXなどの利用時に行われる確認を、すべて「信用審査」と考えるのも適切ではありません。
固定電話番号を使用する電話転送役務では、制度上、最終利用者の本人特定事項や活動拠点を確認する仕組みがあります。
一方、料金の支払能力などについてサービス事業者が独自に行う契約審査は、これとは別のものです。
利用者本人や活動拠点などを確認するもの
事業者独自の契約審査
各サービス事業者が契約条件などに基づいて行うもの
そのため、「自己破産歴や借金の有無が総務省のクラウドPBX審査項目になっている」と理解するのは適切ではありません。
まとめ
クラウドPBXそのものに、総務省が一律に定めた「3つの規制」が存在するわけではありません。
クラウドPBXなどで使用する電話番号やサービスの構成によって、電気通信番号制度や、固定電話番号を使用する電話転送役務、緊急通報などに関する条件が関係します。
特に03・06などの固定電話番号を使った電話転送役務では、固定電話番号の地理的識別性や適正な利用を維持するため、本人確認・活動拠点の確認・設備・音声伝送品質・緊急通報の取扱いなどが重要です。
ただし、これらはクラウドPBXを利用する企業へ一律に課される「規制一覧」ではありません。
固定電話番号を使用する電話転送役務を提供する事業者側の制度上の条件が、契約時の本人確認や活動拠点確認などを通じて利用者にも関係するものです。
「クラウドPBXだから使えない」「アダプターを置けば利用できる」といった単純な判断ではなく、どの電話番号を、どのようなサービス構成で利用しているのかを切り分けて理解することが大切です。
制度の最新情報については、総務省の「電気通信番号制度」もあわせてご確認ください。




