IP電話の「通話品質」を保つための技術「QoS」とは?

「QoS」という言葉をご存じでしょうか?
QoS(Quality of Service)とは、ネットワークを流れる通信を重要度に応じて制御し、音声など遅延に弱い通信の品質を確保しやすくする仕組みです。
IP電話やクラウドPBXでは、音声データもIPネットワークを通って相手へ届けられます。そのため、Web閲覧やファイル転送、動画視聴などの通信が集中すると、音声の遅延や途切れが発生することがあります。
そこで役立つのがQoSです。
QoSを利用すると、ネットワークが混雑した場合でも音声など重要度の高い通信を優先して処理することで、通話への影響を抑えやすくなります。
この記事では、QoSとはどのような技術なのか、IP電話・VoIPとの関係や、通話品質を左右する要素を初心者の方にも分かりやすく解説します。
この記事のもくじ
この記事の監修者
この記事の監修者 登 雄三
(のぼり ゆうぞう)
保有資格:
工事担任者(AI・DD総合種)
/電気工事士
2010年設立「株式会社デジコンnet」の代表取締役。本社を構える神戸を中心に、全国でビジネスフォン・複合機・防犯カメラなどの機器販売や、電話・電気・LAN工事、VPN構築を手掛ける。
2010年設立「株式会社デジコンnet」の代表取締役。本社を構える神戸を中心に、全国でビジネスフォン・複合機・防犯カメラなどの機器販売や、電話・電気・LAN工事、VPN構築を手掛ける。
QoSとは?IP電話・VoIPの通話品質を支える仕組み
QoSは「Quality of Service(クオリティ・オブ・サービス)」の略で、「キューオーエス」と読みます。
ネットワーク分野におけるQoSは、単に「サービスの品質」を表す言葉ではありません。
ネットワークを流れる通信を分類し、重要度に応じて優先的に処理したり、利用する帯域を調整したりすることで、必要な通信品質を確保しやすくする仕組みを指します。
たとえば社内ネットワークでは、IP電話の音声通信だけでなく、Web会議、動画、メール、ファイルのダウンロードなど、さまざまな通信が同時に行われます。
ネットワークが混雑すると、それぞれの通信データが順番待ちになり、音声通信にも遅延や乱れが生じる場合があります。
特にIP電話はリアルタイムで会話する必要があるため、多少データの到着が遅れても問題になりにくいメールやファイル転送とは異なり、遅延やデータの欠損による影響を受けやすい通信です。
そこで、音声通信を優先的に処理するなどして、通話品質への影響を抑えるためにQoSが利用されます。
クラウドPBXでも、音声はIPネットワークを利用してやり取りされるため、ネットワーク環境によって通話品質が左右されます。そのためQoSは、クラウドPBXやIP電話を安定して利用するうえでも関係の深い技術です。
また、IP電話について調べていると「VoIP」「SIP」「RTP」といった言葉を見かけることがあります。
それぞれの役割を簡単に整理すると、以下のようになります。
- VoIP:IPネットワーク上で音声通信を実現する技術の総称
- SIP:通話の開始・変更・終了などを制御するために使われる代表的なシグナリングプロトコル
- RTPなど:音声などのリアルタイムデータを転送するために使われるプロトコル
- QoS:通信を分類し、優先処理や帯域管理などによって必要な通信品質を確保しやすくする仕組み
SIPのようなシグナリングと実際の音声データでは通信の性質が異なるため、QoSでは通信の種類や重要度に応じて分類し、それぞれに適した処理を行います。
つまりQoSはSIPフォンだけに使われる技術ではなく、VoIPを含むネットワーク通信全体の品質を管理するための考え方です。
IP電話の通話品質を左右する3つの要素
IP電話の品質は、単純に「インターネット回線が速いかどうか」だけで決まるわけではありません。
特に音声通信では、遅延・ジッタ・パケット損失といった要素が通話品質に影響します。
QoSの役割を理解するためにも、まずはそれぞれの意味を確認しておきましょう。
遅延
「遅延」とは、音声データを送信してから相手に届くまでに生じる時間差のことです。
IP電話では、話した音声をデータに変換してネットワーク経由で相手へ届けます。
ネットワークが混雑して音声データの処理に時間がかかると、相手に声が届くまでの時間も長くなります。
遅延が大きくなると、次のような問題が起こる場合があります。
- 相手の返事が遅れて聞こえる
- お互いの発言が重なってしまう
- 会話のテンポが悪くなる
ジッタ
「ジッタ」とは、ネットワークを流れる音声データが届く間隔のばらつきを指します。
本来、音声データは一定の間隔で順番に届くことが望ましい状態です。
しかしネットワークが混雑すると、あるデータは早く届き、別のデータは遅れて届くといったばらつきが発生することがあります。
その結果、音声が不自然に聞こえたり、一時的に途切れたりする原因になる場合があります。
通信速度が十分に速く見える環境でも、ジッタが大きいと通話品質が安定しないことがあるため注意が必要です。
パケット損失
IPネットワークでは、音声を細かなデータ単位に分けて相手へ送信します。
このデータの一部がネットワーク上で失われ、相手まで届かない状態が「パケット損失」です。
パケット損失が発生すると、次のような症状につながることがあります。
- 音声が一瞬抜ける
- 言葉の一部が聞き取れない
- 音声が乱れて聞こえる
IP電話はリアルタイム性が求められるため、ネットワークが混雑したときでも音声データが安定して届くように通信を制御することが重要です。
QoSで使われる代表的な制御方法
QoSにはさまざまな制御方法があります。
ここでは、IP電話の通話品質を理解するうえで分かりやすい代表的な考え方として、以下の2つを紹介します。
- 優先制御
- 帯域制御
優先制御とは?
「優先制御」とは、通信の種類ごとに優先順位を設定し、ネットワークが混雑したときに優先度の高い通信から処理する考え方です。
分かりやすく道路に例えてみましょう。
道路が混雑しているときに救急車が近づいてくれば、一般車両は道を譲り、救急車が優先して通れるようにします。
ネットワークでも同じように、すべての通信を同じように扱うのではなく、音声などリアルタイム性の高い通信を優先して処理することで、混雑時の遅延や音声の乱れを抑えやすくできます。
帯域制御とは?
「帯域制御」とは、通信の種類に応じて、利用するネットワーク帯域を確保・調整する考え方です。
こちらも道路でイメージすると分かりやすいでしょう。
道路全体の一部に、特定の車両が利用できる通行枠を設けるようなイメージです。
ネットワークでも、音声通信に必要な帯域を確保したり、特定の通信が帯域を使いすぎないように調整したりすることで、一部の大容量通信によってIP電話の音声が影響を受けることを防ぎやすくします。
ただし実際のQoSでは、優先制御や帯域制御以外にも、通信の分類やマーキング、キューの管理、トラフィックのシェーピングやポリシングなど、さまざまな仕組みが組み合わせて利用されます。
QoSを設定すれば通話品質は必ず改善する?
QoSはIP電話の通話品質を安定させるために有効な仕組みですが、設定すれば必ず音質が改善するわけではありません。
IP電話やクラウドPBXの通話品質には、QoS以外にも以下のような要因が関係します。
- インターネット回線の品質や混雑状況
- 社内LANの構成
- Wi-Fiの電波状況
- ルーターやネットワーク機器の性能・設定
- スマートフォンやSIPフォンなどの利用端末
- 同時に行われている通信量
- 利用しているIP電話・クラウドPBXサービス側の構成
たとえば、インターネット回線そのものの帯域が不足している場合、QoSを設定しただけで利用できる通信容量が増えるわけではありません。
QoSはあくまで、限られたネットワーク資源の中で、どの通信を優先して扱うか、帯域をどのように配分するかを調整するための仕組みです。
IP電話の音声が途切れる、遅延するなどの問題がある場合は、QoSだけを見るのではなく、回線・LAN・Wi-Fi・ネットワーク機器などを含めて原因を確認することが重要です。
まとめ
QoS(Quality of Service)とは、ネットワークを流れる通信を重要度に応じて制御し、IP電話やVoIPなど遅延に弱い通信の品質を確保しやすくする仕組みです。
IP電話の通話品質には、遅延・ジッタ・パケット損失などが影響します。
QoSでは、音声通信などを優先して処理する「優先制御」や、通信ごとの帯域の使い方を調整する「帯域制御」などを利用し、ネットワークが混雑した場合でも通話への影響を抑えやすくします。
ただし、QoSを設定すれば必ず通話品質が改善するわけではありません。
IP電話やクラウドPBXの音声品質を安定させるには、インターネット回線だけでなく、社内LANやWi-Fi、ルーターなどネットワーク全体の状態を確認することが大切です。




